無機固体材料の中には、ナノスケールの格子欠陥が必ず存在します(図1)。
その形態は多岐に渡り、材料が示す多様な機能の発現に深く関与しています。例えば、不純物元素の添加によって材料が蛍光性を示すこともあれば、原子空孔の生成を通じてイオン伝導性が現れる場合もあります。
結晶粒界と呼ばれる領域では、電子伝導性や熱伝導性が数桁変化し得ることも知られています。
このように、格子欠陥を活用した材料特性制御は無機材料科学の根幹であり、これまでも多くの工学的デバイスの発展を促してきました。
では、様々な機能を担う格子欠陥を、その構造も含めて選択的に設計・制御できるとしたら、材料性能はどこまで高められるでしょうか。この問いに答えることは容易ではありません。
電子顕微鏡技術によって格子欠陥の構造を原子レベルで観察することは可能ですが、装置や専門人材には限りがあり、無数に存在する欠陥形態を網羅的に解析するは現実的に困難です。
一方で近年、計算科学・データ科学の著しい発展により、この課題に正面から挑戦できる環境が整いつつあります。
量子力学に基づく第一原理計算により、格子欠陥の構造と機能を高精度に明らかにできます。さらに、その第一原理計算結果を学習した機械学習モデルの開発が進み、欠陥計算を桁違いに高速化・大規模化できるようになってきました。
本研究では、こうした先端技術を最大限に活用し、多様な格子欠陥の形態と材料機能を定量的に結びつけるとともに、ミクロな情報から巨視的な材料機能を予測する基盤技術の構築を目指します。
これにより、熱電変換材料や燃料電池など、エネルギー問題解決に資する機能材料の開発に貢献します。



























